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オープンアクセスの義務化によるアカデミアへの影響とは?

こんにちは。エナゴスタッフのkazumiです。

5月12〜14日の先進7か国いわゆるG7科学技術相会合において、
論文のオープンアクセスについて国際連携を呼びかけたこと、ご存じでしょうか?

政府主導で、公的資金で行なわれた研究の学術論文は
インターネット上で誰でも無料で読めるオープンアクセス(OA)にすることを
研究者に義務づける方針が出されました。

公的資金による研究成果の無料公開義務化に関する経緯

公的資金による研究成果の無料公開義務化に関する経緯としては、
オープンアクセス(Open Access)の原則を推進する動きの活発化が
主な要因となっています。

経緯を簡単にまとめてみましょう。

 

1. オープンアクセスの概念の普及

オープンアクセスは、
研究成果を自由に閲覧・利用できる形で公開することを目指します。

研究コミュニティ内外での情報共有を促進し、
研究の進展と社会への実装を加速させる期待があります。

 

2. オープンアクセスの利点の認識

オープンアクセスにおいて研究成果の無料公開がもたらす利点が
広く知られるようになりました。

つまり、研究者や学術機関、政府機関などが、
研究成果のアクセス制限による
学術の発展や社会全体の利益を阻害される可能性への理解が進んだ背景があります。

 

3. 政府の政策と規制

多くの国や地域で、公的な資金を受けた研究に関する政策や規制が策定されています。

税金を使っての研究ならば、その成果も公に資するべきという考えのもと、
公的資金を受けた研究成果は
オープンアクセスの形で公開するよう求められるようになりました。

具体的な措置としては研究助成金の条件、著作権ポリシーの変更が挙げられます。

研究助成金の条件……公的資金を受けた研究を行なう際、研究助成金の申請条件として、研究成果のオープンアクセス公開が要求される場合がある。著作権ポリシーの変更……政府機関や研究機関は、公的資金を使用した研究成果に対する著作権ポリシーを変更し、研究成果のオープンアクセス公開を義務付ける場合がある。

 

4. オープンアクセスジャーナルの普及

研究成果の公開手段として、
オープンアクセスジャーナルの普及が加速しています。

こうしたジャーナルでは、研究成果が無料で閲覧・利用できるようになっており、
研究者は公的資金による研究成果をこれらのジャーナルに投稿することで、
オープンアクセスを叶えられるわけです。

 

5. 学術出版業界への変化の要請

オープンアクセスの普及に伴い、学術出版業界でも変化が始まっています。

従来の有料の学術ジャーナルの代わりに、
オープンアクセスジャーナルや著者が
研究成果を自ら公開する方法が注目されています。

これにより、公的資金を使用した研究成果が
より広く利用されていくことが期待されます。

 

上記のまとめが、公的資金研究の論文の無料公開義務化の
バックボーンと言えると思います。

オープンアクセスの原則が普及し、
研究成果が自由に共有されるようになったことで、
公的資金を受けた研究成果の無料公開が促進されています。

 

政府が主導しようとしているオープンアクセスの話は、現在のところ
オーブンアクセスのため料金をさらな払う(ゴールドOA)ではなく
グリーンOAという
論文を大学やその他のサイトに掲載することにかんする話のようですが、
とはいえ、ここには問題もあります。

 

オープンアクセス義務化の問題点

政府による公的資金研究の論文の無料公開義務化には、
問題点も次々指摘されています。

 

  • 財政負担の増加

公的資金を受けた研究成果の無料公開を義務化するとなると、
当然ながら学術出版業界の収益形態が変化し、財政負担が増えることが危惧されます。

もし今後ゴールドOAも視野に入ってきた場合、
研究者や研究機関は、研究成果のオープンアクセス公開に伴う費用の負担を
考慮する必要があります。

 

  • 学術出版の多様性への影響

無料公開の義務化が進むと、従来の有料の学術ジャーナルが減少し、
オープンアクセスジャーナルのみが主流になる可能性があります。

ハゲタカジャーナルの浮上も考慮すると、
研究成果の査読や品質管理の問題がにわかに浮上します。

 

  • 知識の独占と競争

一部の研究者や研究機関が公的資金を活用して研究成果を無料公開する一方で、
ほかの研究者や機関がそれにアクセスできない場合、
知識の独占や競争の偏在が生じるという問題があります。

これは公正な学術競争や研究の均衡が妨げられ、格差の問題にも繫がります。

 

研究成果の無料公開義務化は、知的財産権の問題を引き起こすことが考えられます。

研究者が自身の研究や論文を保護し、商業化や特許を取得する権利を制限することで、
産業界との連携や技術の応用に影響を及ぼすことが考えられます。

 

  • 高品質な査読プロセスの維持

研究論文の無料公開が進むと、
査読プロセスの維持や品質管理の課題が出てくるでしょう。

無料公開の義務化によって査読費用のカバーが難しくなり、
査読の厳密性や適切性が損なわれる恐れがあります。

つまり、学術研究の信頼性や品質が下がることが考えられるわけです。

 

  • 研究者の動機付けと報酬体系への影響

研究者は一部の研究成果を商業化、または特許取得によって収益化することで、
研究費の回収や個人のキャリアの展開につなげることができますが、
無料公開が義務化されると、商業化の機会や報酬が制限されることで、
研究者のモチベーションや報酬体系にも影響が出てくるでしょう。

 

  • 文化や学術慣行の多様性への影響

研究成果の無料公開義務化は、
異なる地域や異文化での学術的な慣行や出版文化に影響が出るでしょう。

各国や地域には異なる学術出版の伝統や制度が存在し、
それに応じたアプローチが必要です。

一律に無料公開を義務化することが、
これらの多様性を無視する形になる可能性があります。

 

上に記したことは公的資金研究の論文の無料公開義務化に関連する問題点の一部です。

今後じわじわと影響してくるこの義務化の問題は、
また折りにつけ触れたいと思います。

 

英文校正はエナゴまで♡