英文校正会社がAI翻訳ツール6つを徹底比較!
こんにちは、英文校正エナゴのスタッフのkazumiです。
ここ数年、AI翻訳サービスの遂げる発展は目覚ましいですね。
AI翻訳ツールが充実してきたことで
第二言語の読み書きがほんとうに楽になりました!
そこで、今回は著名なAI翻訳ツールを6つ選び、
その訳文比較をしてみようと思います。
取り上げたのは以下のAI翻訳です。
- Deepl
- Google翻訳
- Bing翻訳
- みらい翻訳
- みんなの自動翻訳
- エキサイト翻訳
原文テクスト
今回比較する英語原文として
アメリカの小説家F・S・フィッツジェラルドのテクストを使用したいと思います。
美文ゆえに翻訳が難しいとされる作家ですね。
It was one of those rare smiles with a quality of eternal reassurance in it, that you may come across four or five times in life.
たしかに原文を活かしつつ日本語に置き換えるのはむずかしそう!
とはいえ、さまざまな翻訳者がこの文章の日本語訳にトライしていますので
まずはご紹介がてら以下3つ挙げてみたいと思います。
①それは一生のうちに、四、五回しかぶつからぬような、永遠に消えぬ安心を相手に感じさせるものをたたえた、まれにみる微笑だった。(野崎孝、1957[61字])
②まったくのところそれは、人に永劫の安堵を与えかねないほどの、類い稀な微笑みだった。そんな微笑みには一生のあいだに、せいぜい四度か五度くらいしかお目にかかれないはずだ。(村上春樹、2006[83字])
③どこまでも安心させてくれる表情だ。こんな笑顔に出会えることは、一生のうちに四回か五回もあるだろうか。(小川高義、2009[50字])
①の野崎孝さん訳はやや硬い語調で原文そのままの流れるような一文に仕上げられ、
②の村上春樹さんはやや踏み込んだ意訳をしつつ
一文の連なりを字数を尽くした一節にし
③の小川高義さんは短く切ったシンプルな読みやすい訳になっていますね。
各AI翻訳の訳文
では、日本語に置き換えるには困難がそこここにあるこの文を
各AI翻訳はどのように訳したのでしょうか。
結果から言うと、今回調べたサービス6つにおいては、
①の野崎訳の文型をほとんどのAI翻訳がとっていました。
人間の手よる翻訳とAI翻訳とのちがいや
あるいはポスト・エディット*1の可能性などに広がる話ですが、
それはまた別の機会に回すとして
以下、各AI翻訳の訳文をひとつずつ見ていきましょう!
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Deepl
ドイツで開発されたAI翻訳の代表格 Deeplからまずは見てみましょう。
無償で5000字まで対応し精度の高い機械翻訳システムとして独走するDeepl。
その訳文はこうなりました。
それは、人生で4、5回出会えるかもしれない、永遠の安心感を持った稀有な微笑みだった。
一文でまとめられ、訳語も語調も ①の野崎訳にかなり近いですね。
ただし、①では細心の工夫がなされている
「永遠に消えぬ安心を相手に感じさせる……」という部分が
Deeplでは「永遠の安心感を持った」とややぼかされていますね。
世界的な展開をするGoogleのサービスであるGoogle翻訳。
検索をすると、Google翻訳が一風変わった珍訳が表示することがあり
ときどき話題になりますね……。
それでは、そんなGoogle翻訳はフィッツジェラルドをどう訳したか。
結果はこちらです。
人生で4、5回出会うかもしれない、永遠の安心感のある珍しい笑顔のひとつでした。
”one of those rare smiles”という箇所を
「笑顔のひとつ」として忠実に拾っていますね。
またDeeplがrareを受けて可能態を読み込んでいるのに対し、
「出会うかもしれない」と訳されいる点
原文の風合いが出ているでしょうか。
このような文型をとる訳文はほかにも出くわしました。
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Bing翻訳
Microsoft社のBing翻訳も原文に忠実な訳のひとつです。
早速見てみましょう。
人生で4、5回出くわすかもしれないという、永遠の安心感を持つ珍しい笑顔の一つでした。
Google翻訳と同じく「笑顔の一つ」としていますが、
itを落とし、that説を「〜という」とかけているせいか、
後半にある「永遠の安心感を持つ珍しい笑顔の一つ」という修飾が
個人的には日本語訳としてややすっきりしない印象を持ちました。
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みらい翻訳
次は、株式会社みらい翻訳が無償で提供するみらい翻訳です。
基本的な機能はお試しサービスとして使用することができます。
文字制限が2000字ですが、ちょっとした文章の翻意を知るには十分です。
訳文は以下のようになりました。
人生で4、5回出会うかもしれないという永遠の安心感を持った、珍しい笑顔でした。
Deeplと同じくone of〜を流すことでぎこちなさを解消し
itを強調せずにthat節を「〜という」としているところは、
Bingと同型です。
いわば最大公約数とも呼べるバランスのよさを感じさせられます。
さて、これらとは一風ちがう訳文を出したのは、みんなの自動翻訳です。
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みんなの自動翻訳@TexTra®
一生のうちに4、5回出会えるような、永遠の安心をもたらすような、めったにない笑顔の一つだった。
「自動翻訳をみんなで育てるサイト」として知られるみんなの自動翻訳@TexTra®。
国立研究開発法人情報通信研究機構が公開する
ユーザーにより精度の向上もあがっていくサイトです。
原文に忠実かどうかは受け取りかたでちがうかもしれませんが
「〜ような」という重畳法を用いることで
文章のリズムを大切に日本語にしている訳文
が特徴でしょうか。
個人的には文学作品の翻訳としていちばん風情があるように感じました。
それとは異なり、やや引けを取っているように見えたのはエキサイト翻訳です。
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エキサイト翻訳
それは、人生で4、5回出会うかもしれないという永遠の安心感の質を持った、その中に稀有な微笑みの一つでした。
これまでとは異なり、ナチュラルさは後退しほぼ語彙の直訳に見えてしまいます。
深層学習を組み込むAI翻訳ならではの今後の進化に期待です!
以上、徹底比較と題して8つのAI翻訳サービスの比較をしてみました。
オンラインの自動翻訳ツールは日々アップデートされていきますので
このブログでも引きつづき追っていきたいと思います。
今回取り扱ったAI翻訳以外の比較や使用テクストのアイディアなどあれば、
ぜひコメント欄でお知らせくださるとうれしいです!
ちなみにわたしたちエナゴの運営サイトクリムゾンでは
過去こんなコラムもご紹介していますので、よろしければ覗いてみてください。
なにかしらお役に立てば幸いです。
お読みくださりありがとうございました!