おもしろ論文探索ガイド〜vol.2 オウム・インコ篇
こんにちは。研究支援エナゴのスタッフkazumiです。
英語論文の英文校正・英文校閲・ネイティブチェックから投稿サポートまで、学術研究論文に特化したトータルソリューションを提供しています。
前回、ねこにまつわる「おもしろ論文」をご紹介しまして
みなさんが研究論文と聞いてお持ちになるだろうイメージを
どかーん! と裏切ってみました。
今回もわたしが出くわしてきた
専門外からすると
ちょっと笑ってしまうようなテーマの論文を
いくつかご紹介してみようと思います。
ねこの次は、みんなが大好きオウムとインコちゃんでいってみたいと思います。
それでは、ニッチでユニークな研究ワールドの奥深い迷宮に
本日もわけいってまいりましょう!
まずは
世界で初めてセキセイインコがリズムに合わせて運動できることを確認した意義深い論文。
(長谷川 愛、岡ノ谷一夫、長谷川壽一、関 義正、2011 Scientific Reports )
https://www.nature.com/articles/srep00120
世代や国の垣根を越えて、音楽とダンスは人間の文化とコミュニケーションの中心となっている。最近、オウムやゾウのような発声学習を行う動物が、ヒトと同様のリズム能力を持つことがわかった。そこで我々は、リズムに乗る能力の進化を理解する第一段階として、条件を統制し、体系的にデザインされた実験環境下で、声真似をよく行うオウム目の一種であるセキセイインコのリズム同調性を調査した。我々は8羽のセキセイインコを訓練し、メトロノームのような視聴覚刺激のリズムにあわせて、あるキー(LED)をつつくという、等時間隔的なタッピング課題を行わせた。その結果、セキセイインコは、さまざまなテンポの外部刺激に同調することがわかった。実験個体は、本種の生得的な発声のリズムに近い、速いテンポでタップする傾向を持ち合わせているように思われた。セキセイインコが示したヒトと類似したパフォーマンスには、発声学習が寄与していると考えられる。
オウムの仲間の一種であるセキセイインコちゃんは
リズムに合わせて机などを叩く(タッピング)ことができるんですね……!
うう、か、かわゆい……!
そして「我々は8羽のセキセイインコを訓練し」という件が
不要にかっこいいです。
つづいて次のショートarticleは、タイトルからして期待大です!
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オウムの声まねから学べるもの
(関 義正、2018心理学ワールド)
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/85-27-28.pdf
……オカメインコ(分類学的にはインコではなくオウム)は口笛のような声で音楽のメロディを真似るのが得意です(なお、ヒトの口笛は声帯運動を伴わないので発声ではありませんが、オカメインコの声は発声です)。私たちの研究室でも,手乗りとして育てた雛3羽がヒトによる口笛の演奏を真似るようになりました。さらに、ヒトの演奏が始まると途中からそれに加わり、タイミングを合わせて一緒にうたうようになりました。これには、メロディ全体を記憶し、聞いている音がその時間構造のどこに位置しているのかを判断し、次に出てくる音のタイミングを見計らって発声器官を運動させるという一連の複雑な認知過程を要します。これまでに、このような「ユニゾン」をうたうヒト以外の動物の報告はありません。この特異な行動を発現させたのは,ヒトとの間に築かれた強い社会関係かもしれません。さて、同じ種でもヒトが発する音を真似るトリとそうでないトリがいます。その理由の一つは「絆の強さ」の違いにあるかもしれません。
「手乗りとして育てた雛3羽が(……)ヒトの演奏が始まると途中からそれに加わり、タイミングを合わせて一緒にうたうようになりました」!
これだけでもメロメロですが、その理由が絆の強さに基づいているとしたら
顔がとろけていく世のとり飼いさんたちの姿が思い浮かびます……
とりの感情の豊かさですね。
最後は今回わたしがいちばん好きだった論文名です。
「超腹話術」!
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九官鳥, インコ, そして超腹話術 : その声の謎解き
(伊福部 達、2000日本音響学会誌)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/56/9/56_KJ00003054202/_pdf/-char/ja
読み始めて最初が「1、いっこく堂との出会い」だったので、あれ論文間違えた? と思いましたが、
「発声法の解明のための実験協力をお願いした。いっこく堂さんは私の依頼を快く受けてくれたのであるが、その後、彼が超多忙になり……」
と九官鳥とインコの話に移っていって、
ああやはり鳥の論文だった、とほっと(?)しました。
……くちばしを開けたままどのようにして /pa//ba//ma/ を発声できるのかということであった。その後、マガーク効果といって /ga/ といいう口の開きの映像に、/ba/の音を重ねると、聴覚が視覚に影響されて /ba/という声ではなく /da/ や /ga/ に聞こえるという発見がいろいろな論議を呼んだ。しかし、インコは口を開けたまま /ba/ と発声しても、ヒトの耳にはやはり /ba/ に聞こえるのだから、マガーク効果はインコでは通用しないことになる。このことに関しては九官鳥も同じで、くちばしを開けたまま /pa//ba//ma/ を発声できる。この謎解きに再び挑戦するときがくるのに15年かかった。それはいっこく堂という天才腹話術師の登場したことがきっかけとなった。
専門的な話題にぐっと集中した論文の最後は、やっぱりいっこく堂さんでした!
以上、今回は鳥にかんするおもしろ研究論文をお届しました。
いかがでしたでしょうか。
やっぱり
真面目な学術論文にあるおもろギャップがたまらなかったです!
ほかの分野にも数々のおもしろユニーク論文がまだまだありますので
このブログでまたご紹介していかれたら、と思います。
そして、研究の世界に興味を持たれたかたには
わたしたちエナゴが運営するサイト:エナゴ学術英語アカデミーのブログ記事がオススメです。
よかったら一度覗いてみてくださいね。
いやいや、研究って奥深いですね!
英文校正はエナゴまで―♡