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論文捏造の深刻さ - 2023年岡山大学の事例

2022年4月、岡山大学の医学部教授神谷厚範氏ががん治療に関する研究論文を捏造していたことが発覚しました。

この事件は、岡山大学教育機関としての信頼性を揺るがす大きな問題として話題になっていますよね。

神谷教授による捏造行為は、米国の科学雑誌であるNature Neuroscienceに掲載された論文が問題視されて論文の一部に改ざんを行なったことが発端となり、発覚しました。

この論文は、新しいがん治療法の可能性を示唆する内容で、岡山大学によると100回以上引用されたとのことです。

調査に対し、神谷氏は論文の捏造を意図的に行なったわけではないと主張したと報じられています。

 

詳細を整理しましょう。

岡山大学は、捏造行為の疑いがあることが判明した後、内部調査を開始し、改ざんが行なわれたデータや原稿の保管場所の特定し、改ざんが確認されたデータは捏造行為の疑いがあるものとして再調査しました。

再調査の結果、改ざん部分は、研究データの数値の一部を偽装していたことが判明。

神谷教授はデータの一部を変更した不正や、また同じテーマの別の論文についても研究データを改ざんしていたことがわかっています。

これらの倫理不正で神谷教授の研究成果はすべて無効になり、今後の研究活動の場はなくなりました。

岡山大学は、捏造行為に対する厳正な対応を取り、この教授を解雇することを発表しました。


捏造についてまとめた過去の記事を読んでいただければわかるように、この事件によって、また新たに科学研究における倫理観の欠如があらわになり、日本の科学研究の信頼性に深刻な影響を与えるでしょう。

 

言うまでもないことですが、科学研究においては、論文の発表が研究者たちにとって最も重要な意義を持ち、研究者としてのキャリアを駆け出した時点から研究成果の正確性と透明性を重んじるようにと口を酸っぱくして言われてきています。

研究成果が論文として発表されることにより、その成果が他の研究者や学術界で評価され、その分野の発展につながることが期待されます。

しかし、その成果が認められるのは、論文の正確性と透明性が担保されていることが大前提にあるのです。

捏造行為は、たとえ小さな改ざんであっても、論文が正確であることの前提を損ない、研究成果を全体を偽造したことになります。その結果、他の研究者や学術界に誤った情報を提供することになり、科学研究の信頼性に影響を与えることになります。

とくに、医学分野の研究の情報は、患者の生命にかかわる重要性があるため、より厳格な倫理規範が求められます。


今回の岡山大学の事件は、科学研究における倫理観の欠如が問題となっており、岡山大学は、この事件を教訓とし、今後は研究において倫理観を重視する取り組みを強化すると発表しました。

科学研究全体の信頼性を守るためにも、研究者は倫理観強く持ち、その理由を真摯に考え、正確かつ透明な研究成果を発表しなければなりません。

参考記事:「科学界における不正行為」の代名詞的存在となってしまったシェーン博士の研究者人生と、彼の不正行為が学術界におよぼしたインパクト